半蔵門ミュージアム木造阿弥陀如来立像
真如苑真澄寺木造阿弥陀如来立像
2024年〜2025年
修復のお話をいただいた当初、本像は解体状態にありました。部材のひとつひとつを手に取ると、後世に修復された痕跡が随所にのこされており、さまざまな手を介して守り継がれながら、いまは残念な状態となっていることが分かりました。
本像はその造形から、平安時代後期、12世紀後半の作とみられます。来迎印を結ぶ両手先は後世に補われたものにかわっておりましたが、当初から阿弥陀如来像として造られた可能性が高いと考えられます。ほかにも後頭部をはじめ、左袖先、足先、台座なども、後世に補作、あるいは転用されたものとなっていました。
修復は、著しく遊離していた漆箔層の剝落留めから始まりました。長年浮き上がっていた漆箔層は、癖がついてしまっています。繰り返し、ゆるやかに像表面に沿わせていくことで、再び定着させることができました。また、クリーニングを施すと、固着した汚れの下からも、ところどころに金箔が現れました。
後世に補われていた部材は取り外し、別保存とすることにしました。その上で、半蔵門ミュージアム館長山本勉先生監修のもと、全体の平安時代後期の造形に見合うよう当該部分を新たに制作いたしました。それらの箇所は、新補したことがあきらかとなるよう、古色仕上げをせず単色の黒色で仕上げています。
阿弥陀如来立像は、令和7年9月13日より半蔵門ミュージアムにて開催されます特集展示『阿弥陀仏―おわす・みちびく・あらわれる―』にて初公開となります(~12月28日。月・火曜休館)。800余年の長い時を経て、ようやく安住の地をえたその姿を、多くの方々に拝していただけますならば、修復を担当した者として大きなよろこびです。