威徳院極楽寺移動式厨子(笈)および木造弘法大師像
威徳院極楽寺 移動式厨子(笈)および木造弘法大師像
2023年
- 名 称
- 移動式厨子(笈)および木造弘法大師像
- 制作年
- 2023年
- 材 質
- カヤ、水晶
- 技 法
- 寄木造、玉眼
- 寸 法
- 像高17cm
- 施工者
- 移動式厨子(笈)、曲録制作:岩下清
令和5年は、弘法大師御生誕1250年を祝し、全国の真言宗寺院において大規模な法要が行われる記念的な年となりました。それを契機にお声がけいただいたのが、「移動式厨子に入る、弘法大師像を制作してほしい」というお話でした。
ご依頼をいただいた威徳院極楽寺さまは、栃木県のお寺です。「移動式の厨子」とは、私にとって耳慣れない言葉でした。ご住職によると、「小さな厨子に安置した弘法大師像を背負い、お大師様ゆかりの地を自ら練り歩くことにより、栃木のお寺の檀家さまや地域の皆さまにその功徳を持ち帰り、広めたい」との思いから、制作を決断されたとのことでした。ご住職のお話をうかがい、その役割を担うのにふさわしい弘法大師のお姿を、どのようにしたら実現できるのか構想を練るところから制作はスタートしました。
まず一つ目に、人が抱えられるサイズの移動式の厨子に入ることから、おのずから寸法に制約があります。それでも、「弘法大師」の象徴である五鈷杵・念珠・沓・曲録・浄瓶は丁寧に制作したいと思いました。小さな像でも“弘法大師の象徴”を大切にすることで、ひと目見て弘法大師像であることがわかります。
二つ目に、道ゆく人が見ても、あるいはお寺で参拝者がお厨子を覗き込んでも、内側からしっかり目が合うよう、正面を向いていて欲しいと思いました。その際願わくば、お大師様の存在感を放つよう、ひとみに輝きを灯したいと思いました。
そのような構想のもと、ご住職と意見を交わしながら完成したのが、本弘法大師坐像です。移動式厨子に安置された弘法大師像は、ご住職と各地をめぐり、栃木に帰ることとなりました。「旅する弘法大師像」が、栃木の地でより広く教えを伝える一助となれば嬉しいです。